社内恋愛狂想曲
「わかってる。だから明日行こうかって、彼と今話してたところ」

母と電話で話しながらチラッと潤さんを見ると、潤さんは手を差し出して、電話を代われと催促する。

「お母さん、ちょっと待って。今、彼と電話代わるから」

そう言うと母は少し驚いたようだった。

電話の向こうで少し焦る母の顔が目に浮かぶ。

電話を代わると潤さんは落ち着いた口調で簡単に自己紹介して、明日の訪問についてお伺いを立てた。

潤さんの返事や相槌を聞く限り、母は快諾したようだ。

「それでは明日の11時頃お伺いしますので、よろしくお願いします。志織さんにお電話代わりますね」

さすが営業職、あの手強い母に怯むことなく終始柔らかい口調で話し、そつなく会話をしめると、私にスマホを差し出した。

電話を代わると、母は感嘆の息をもらした。

『人柄の良さそうな方ね』

「うん、お父さんもお母さんもきっと気に入ると思うよ。そういうことだから、明日、一緒に帰るね」

電話を切った途端、潤さんは大きく息をついて脱力した。

私が思っていたよりかなり緊張していたようだ。

「潤さん、大丈夫?」

放心している潤さんの顔を覗き込むと、潤さんは私に抱きついて頬をすり寄せた。

甘える潤さんもかわいい。

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