社内恋愛狂想曲
「さすが家康様……参りました……」

私の愛しい家康様は、私が思っていたよりずっと策士で、用意周到だったらしい。

降って湧いたような偽婚約者作戦だったけど、あれはもしかしたら瀧内くんじゃなくて潤さんが仕込んだものだったんだろうか?

「偽婚約者作戦は潤さんの策だったの?」

「いや、あれは玲司が勝手に言い出したことだけど、俺はそれに乗っかっただけ。うまく行ってホッとしてる」

「お見逸れしました……」

結局私は、気付かないうちに二人の策士に翻弄されていたということだ。

だけどそのおかげで潤さんと新しい関係が築けたのだから、すべて善しとしよう。

「それじゃあ明日は早速志織のご両親に挨拶に行こう。お母さんに電話して」

「わかりました」

潤さんに促され母に電話しようとすると、ちょうど母からまた電話がかかってきたので、二人で顔を見合わせて笑った。

「すごいタイミングだ」

「うちの母、すごくせっかちなんです。実際に会って怖くなっても逃げ出さないでくださいね」

そう念を押してから電話に出ると、母からの電話の要件は、案の定“いい加減彼氏を家に連れてきなさい”ということだった。

彼氏というか、もう婚約者なんだけどね、と思いながら笑いをこらえる。

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