社内恋愛狂想曲
「話したというか……一方的に話されたというか。また本社の営業部に戻ることになったってことと、急に別の人と結婚してごめんなさいとか、離婚して今は独り身だとか……今の俺にとってはどうでもいいことばっかりだったし、それより今は志織のことを追いかけないとってことで頭いっぱいだったから、細かいことはよく覚えてないんだけど……適当に返事して、急いで行かなきゃいけないところがあるからって言って帰ってもらった」

適当に聞き流したということは、もしかしたらそのときに“本当はあなたが好きだったの”とか“もう一度付き合いたい”とか言われたのかも知れない。

もしそうだとすると、下坂課長補佐は上の空の潤さんがした生返事を真に受けて、潤さんがまだ好きでいてくれていると勘違いしたという可能性もある。

「潤さん……そのときに好きだとか付き合いたいとか言われたんじゃないの?」

「さぁ……?記憶にないなぁ……。あ、でも、本当は俺のことが好きだったけど、結婚しろって親がうるさかったとか言ってたな。そんなことをいまさら言われてもどうしようもないから、“ああ、そう”って思った」

潤さんは下坂課長補佐のことは本当にどうでも良かったらしい。

そんな風に思われていたことも知らずに必死でアプローチしていた下坂課長補佐がほんの少しだけ気の毒だ。

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