社内恋愛狂想曲
「あのさ……俺もこの際だから聞くけど……志織は俺のことなんか全然意識してなかっただろ?」

予想外の潤さんの問いかけに、私は少し首をかしげる。

「デートの帰り際に俺がキスしそうになったあとも、志織は“気にしてない”って言ってたし……」

「だってあれは……“どうしてあんなことしたんですか?”なんて聞くのも気まずいし、私のことなんとも思ってないのにその場の雰囲気とか勢いでそうしちゃったのかなと思って……。それにそのときはまだ潤さんに恋愛感情はなかったし……」

「うん、まぁそうだろうなとは思ってた。けど、そのときはそうだったとしても、彼女がまた俺の前に現れたことで、少しくらいは気にしてくれるのかなって思ったんだけど……。車の中で彼女のイヤリング見つけても“私には全然関係ない”とか言って、俺のことにはまったく興味なさそうだったから、けっこうショックだった」

潤さんはそう言いながら、少し恥ずかしそうに目をそらす。

潤さんには好きな人がいると思い込んでいた私が、傷付かないようにと何度も自分に言い聞かせていた言葉だ。

それが知らないうちに潤さんを傷付けていたことには気付かなかった。

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