社内恋愛狂想曲
潤さんもまた父に向かって「三島潤です、よろしくお願いします」と言って深々と頭を下げる。

「そんなにかしこまらないで。今日はゆっくりして行ってくださいね」

ゆっくりして行けと言われたら、逆にプレッシャーに感じるんじゃなかろうか。

ここまではごく普通に“初めて娘に恋人を紹介される両親の姿”だけど、うちの母はこのまま和やかに終わるような、そんな生易しい性格ではない。

帰る頃には潤さんが怯えてなければいいけど。

「それじゃあ早速お聞きしますけど……」

……来た。

警察官も真っ青の取り調べみたいになるんじゃないだろうかと不安がよぎる。

「いつ結婚するの?」

あまりにも唐突な母の質問に、潤さんは口に含んでいたお茶を危うく吹き出しそうになった。

これには私も度肝を抜かれてしまった。

「お母さん!普通そんなこといきなり聞く?!」

「えっ?だってそのつもりだから挨拶に来たんでしょ?」

うろたえる私に対して、母はあっけらかんとそう言った。

潤さんはポケットから取り出したハンカチで口元を拭って、まっすぐに両親の方に向き直る。

「はい、今日はご両親に志織さんとの結婚のお許しをいただくつもりで参りました」

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