社内恋愛狂想曲
母は湯呑みに注いだお茶をまずは父の前に置く。

それから潤さんと私の前にもお茶を置き、テーブルの真ん中にお茶菓子を置いた。

「二人とも和菓子が好きだから喜ぶとは思ってたけど……そんなに喜んでくれるとは思わなかった」

「お父さんが一番好きな和菓子屋さんなのよ。知らなかった?」

「知らなかったけど、潤さんがここにしようって。取引先の社長さんに、この店の栗饅頭と大福が美味しいって教えてもらったんだって。きんつばは潤さんが選んだの」

「潤さんっておっしゃるの?」

母が潤さんの方を向いて尋ねると、潤さんは正座をしたまま背筋を伸ばし、またかしこまって深々と頭を下げた。

「はい、三島潤です。志織さんとお付き合いさせていただいています」

「志織の母です。志織がいつもお世話になってます」

母が挨拶をすると、潤さんは恐縮した様子で「こちらこそ」とまた頭を下げる。

「お父さんも挨拶くらいしたら?」

母に促され、父もきちんと座り直して潤さんに頭を下げた。

「志織の父です。志織がいつもお世話になってます」

母と同じことを言うんだな。

初めて娘に恋人を紹介されるときって、こんなものなんだろうか。

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