社内恋愛狂想曲
「それはまた珍しいパターンね……。それでお父さんはまだお勤めしてらっしゃるの?」

「ええ、まぁ……」

「うちのお父さんは中学校の国語教師でね、今年の春に定年退職してからも非常勤講師として教壇に立ってるのよ。潤さんのお父さんはどんなお仕事を?」

母に尋ねられ、潤さんはまた私の方をチラッと見る。

さっきからなんだろう?

潤さんのお父さんとは一度顔を合わせただけではあるけれど、身なりもきちんとしていたし、人には言いにくいような仕事をしているとは思いがたい。

「父は……会社を経営しています。曾祖父の代から続く会社でして、父はその会社の3代目です」

それは初耳だ。

それを聞いて初めて、潤さんのお父さんがうちの会社の会長の娘と結婚したのにも納得がいった。

歴史のある会社のようだし、おそらくそれなりの家柄なのだろう。

「あら、社長さん?どんな会社なの?」

母は興味津々な様子で軽く身を乗り出した。

父は黙ってイカのお寿司を口に運ぶ。

「化粧品とかシャンプーとか石鹸とか……そういった生活用品を作っている会社でして……」

「まぁ……じゃあうちにもひとつくらいはあるかしら」

「おそらく何かしらお使いだと思います。テレビCMなどもやってますし海外にも出荷してますので、知らない人はほとんどいないかと……」

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