社内恋愛狂想曲
「いえ、これは私の不注意から起きた事故ですので、むしろ私の方が心配をおかけして申し訳ないです」

私がそう言うと、葉月は私の顔をじっと見た。

「志織、目の下めっちゃクマができてんな。えらい疲れた顔して、出張そんなにきつかったん?」

ほんの少し顔を見ただけで私がいつもの状態ではないことに気付くなんて、やっぱり葉月の観察眼は鋭い。

この数日の間に起こった潤さんとのできごとが、頭の中を駆け巡った。

「出張もそれなりに大変だったけど、これは仕事とは別のことでね……ここ何日かよく眠れなくて……」

「珍しいなぁ、健康優良児の志織が眠れんとか……。なんか悩みでもあるんやったらなんぼでも聞くで」

「うん……」

私がうなずくと、有田課長が資料を手にイスから立ち上がった。

「それじゃあ俺は佐野主任の無事も確認できたことだし、仕事残してきたからそろそろ会社に戻るとするかな」

これは有田課長なりの、部下のプライベートな問題に立ち入ってはいけないという気遣いなのだろう。

忙しい中をわざわざ駆けつけてくれた有田課長にお礼を言って見送ったあと、葉月は私の方を向いて「それで、どないした?」と尋ねた。

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