社内恋愛狂想曲
「あんたは今、なんのためにここに帰ってきてるの?」

いつもより少し低い母の声は、私に自分の置かれている状況を思い出させた。

母はギプスで固定され三角巾で吊られた私の左腕をじっと見ている。

「……療養のため」

「そうね。そんな体でこんな時間から出かけて何かあったらどうするの?それでまた事故にでもあったら、私は面倒見きれないわよ」

「はい……ごめんなさい……」

私は自分で自分の身の回りのことができないから、母の世話になるためにここにいるのだ。

母が心配するのも当然だと思う。

「一体何があったの?」

「昨日からずっと潤さんと連絡が取れなくて……葉月も伊藤くんも瀧内くんも、今日の昼からずっと……」

「それで焦って出て行こうとしたわけね」

黙ってうなずくと、母は小さな子どもにするように私の頭を優しく撫でた。

「大丈夫よ。あの人たちは志織が心から信頼できる人たちなんでしょう?意味もなく志織を嫌ったりしないはずよ」

「うん……。だからきっと何か理由があるんじゃないかと思って、それを確かめに行こうと……」

私がそう答えると、母は少し驚いた顔をした。

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