社内恋愛狂想曲
葉月がコーヒーを運んできてテーブルの上に置くと、ゆうこさんは「みなさんでどうぞ」と高級洋菓子店の紙袋を差し出した。

潤さんは話が長くなりそうだと思ったのか、3人に先に食事をするよう促す。

潤さんのお父さんはコーヒーを一口すすり、「うーん」と唸りながらカップをソーサーの上に戻し、おもむろに顔を上げた。

「二人は結婚するつもりなんだろ?一緒に暮らすならきちんと籍を入れたらどうなんだ?」

私と潤さんは驚いて顔を見合わせた。

潤さんのお父さんが、私の母と同じことを言っている……!

母のように“ついでに”とは言わなかったけれど、結婚を急かしたり、一緒に暮らすと言うと入籍を勧めたり、もしかしたら潤さんのお父さんもかなりせっかちなのでは?

「そんなこと言ったって、親父たちは志織とは一度顔を合わせただけだったし、親同士の挨拶もまだだろ?それに俺たち今はこんな状態だから」

潤さんはお父さんの方を向いたまま、自分と私を交互に指さした。

「骨折してても入籍はできるぞ」

「いや、そういう問題か?」

「そういう問題だろ?いくら婚約者とは言え、結婚もしてないのによそ様の大切なお嬢さんを一緒に住まわせるのは、ご両親に申し訳ない」

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