社内恋愛狂想曲
私は三十路を目前に控えて周りから心配されているけど、ふたつ歳下の護はまだ二十代だ。

結婚を急ぐ理由なんてないし、むしろ独身の今だからこそ目一杯遊びたいのかも知れない。

「佐野は彼氏がいるんだろ?早く結婚すれば?」

「早くすれば?って……そんな簡単に言わないでよ。いとこにも母親にも同じこと言われて滅入ってるんだから。伊藤くんこそ早くすれば?彼女の一人や二人、いるんでしょ?」

伊藤くんは店員が運んできた生ビールを受け取り、ひとつを私に手渡してため息をついた。

「それがいないんだなぁ。なんか俺、好きになって付き合っても、いっつもフラれんの」

「……なんで?」

「あなたといると浮気を疑ったり嫉妬ばかりして疲れるからもう無理ってよく言われる」

やっぱり歴代の彼女たちも私と同じことを思っていたようだ。

「それはなんとなくわかるような気がする」

正確に言うと“なんとなく”でも“わかるような気がする”でもなく“とてもよくわかる”なのだけど、それを言ったら伊藤くんはきっとショックを受けるだろうと思い、少々ぼやかして返事をしてみる。

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