社内恋愛狂想曲
この流れ……いや、激流に抗える強者なんて、この世に一人たりともいないだろう。

「は……はい……問題ありません……」

私が目をそらすこともできないままそう言うと、潤さんのお父さんは満足そうにうなずいた。

「よし、決まった。今日は土曜日か……。明日は役所は休みだから、入籍は明後日だな」

超絶いい人の潤さんのお父さんは、超せっかちな私の母をしのぐ超絶せっかちな人らしい。

お父さんの勢いに飲まれて、うなずくことしかできない私と潤さんを見ながら、父が苦笑いを浮かべた。

「イチは相変わらずせっかちだね。潤くんが後を継ぐ気になってくれて嬉しいのはわかったから、少し落ち着こうか」

昔からそうなのか!

もしかすると学生時代も、正反対の性格の慎重派の“サクちゃん”が、事を急ぐせっかちな“イチ”をなだめたり説き伏せたりしていたのかも知れない。

「母さんと潤くんのお父さんはそう言ってるけど……肝心の志織と潤くんはどうしたいのかな?」

父は長年の教師生活ですっかりそれが染み付いているのか、教え子に進路指導をするときのような口ぶりで私と潤さんに尋ねた。

「……お父さんはどう思う?」

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