社内恋愛狂想曲
逆に尋ねてみると、父は少し首をかしげて私たちを見る。

「二人は結婚の意思もあることだし、焦る必要はないと思うけどね……親としてはやっぱり、形にはこだわるかな」

「形って……」

「一緒に暮らしていても、籍が入っているのといないのとでは、まったく意味が違うだろう?入籍していれば夫婦だし、家族だからね。もし何かあったときに、一番に連絡が入るのは家族だよ」

なるほど、そういうことか。

もし事故や急病で救急搬送されるようなことがあった場合、家族ならばいち早く連絡を受けて駆けつけることができるのだ。

私も潤さんも事故にあったばかりだから、父の言いたいことはすぐにわかった。

「そうね……。志織は事故で怪我してうちに帰ってきてたときに、潤さんが事故にあったことを知らなくて、もう夜なのに“潤さんと連絡がつかないからこれから会社に確かめに行く”って、泣いて取り乱してたものね」

「お母さん……!」

何も潤さんとご両親の前で暴露しなくても……!

今思えば、いい歳して親の前で泣いて駄々をこねたなんて、子どもみたいで恥ずかしい。

恥ずかしさのあまり顔を赤くしていると、潤さんはほんの少し口元をゆるめた。

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