社内恋愛狂想曲
「確かに俺は後を継ぐ気がなかったからあの会社に就職したよ。でもここ何年かは、後を継ぐことをまったく考えてなかったわけじゃない」

「だったらどうしてうちの会社に来なかった?」

「……俺には俺なりに、あの会社にいる理由があったんだよ……」

歯切れの悪い潤さんの口ぶりに、父は小さく声を出して笑う。

「潤くんはお父さんと違って気が長いんだね。潤くんにそんなに一途に想われて、志織は幸せだと思うよ」

父にそう言われた潤さんは照れくさそうに頭をかいている。

潤さんのお父さんも、会社にいた理由が私だったと気付いたようだ。

「なるほど……そういうことなら、志織さんとは結婚するんだから、今の会社はいつ辞めても問題ないな。いつからうちの会社に来る?年明けか?」

「どこまでせっかちなんだよ……。俺、課長だよ?退職するなら引き継ぎとかいろいろあるし、職場復帰していきなり退職するなんて言ったら迷惑がかかるだろ?いくらなんでも年明けは無理だ」

どこまでもせっかちな潤さんのお父さんは、私たちの結婚だけでなく潤さんの社長就任まで、私の両親という証人がいるこの場で一気に決めてしまいたいんだろうか。

< 886 / 1,001 >

この作品をシェア

pagetop