社内恋愛狂想曲
「カーナビ使わないんですか?」

「ええ、一応ついてますけど、ここを曲がれとか何百メートル先だとか、わかりきったことを言うのがうるさいので苦手なんです。知らない土地ですと地図を見て道を確認するくらいはしますが、ナビ機能は使いません。最短ルートを走るなら、わたくしの記憶の方が確かですから」

「そうなんですね……」

ゆう子さんの頭の中には完璧な地図も搭載されているようだ。

一度でも行ったことのある場所はもちろん、行ったことのない土地でも、出発前に地図で確認すれば目的地までのルートは完璧に頭に入っているらしい。

それにしてもゆう子さんの運転はとても滑らかで乗り心地がいい。

潤さんのお父さんが「プロのドライバーより運転がうまい」と言っていただけはある。

「志織さんのマンションは玲司のマンションのすぐ近くなんですね」

ゆう子さんは前を向いてハンドルを握りながら呟いた。

瀧内くんの母親であるにもかかわらず、ゆう子さんの口から“玲司”という名前が出てきたのは初めてのような気がする。

「はい、詳しい場所までは知らないんですけど、最寄り駅が同じなので駅で会ったことがあります」

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