社内恋愛狂想曲
脳内の完璧な地図を駆使して最短ルートを走ったのか、ゆう子さんは私も潤さんも知らない道をスイスイ進み、予定よりも時間にかなりの余裕があったので、私の住んでいたマンションの近くの役所に立ち寄り、私の転出届を出した。

そしてゆう子さんが運転中に「この調子でいくと4時過ぎには着く」と言っていた通り、4時10分頃に役所に着いた。

「いよいよだな」

「うん……緊張するね」

駐車場で車を降りて、私と潤さんは緊張のあまり深呼吸をする。

そんな私たちを見たゆう子さんは、ほんの一瞬おかしそうに笑いをこらえたあと、私と潤さんの肩に手を添えて微笑んだ。

「お二人とも、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。まずは戸籍課の窓口で婚姻届を提出しましょう」

左足にギプスをして松葉杖をついた潤さんと、ギプスをした左腕を三角巾で吊っている私が、二人そろって窓口の担当者に婚姻届を出すと、担当者はそれを受け取りながら驚いた様子で私と潤さんを交互に見た。

こんな痛々しいカップルが婚姻届を出しに来たら、そりゃまぁ、驚くよね……。

少し恥ずかしいなと思いながら戸籍謄本を差し出す。

担当者はすぐに仕事モードに気持ちを切り替えたらしく、至って普通の表情で婚姻届と戸籍謄本を受け取り、訂正箇所がないかを確認し始めた。

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