社内恋愛狂想曲
ちょっと待って、出張から帰るのは日曜の晩じゃなかったの?

もしかして帰りは別々で、護だけ明日帰ってくるとか?

「帰りは別々だったの?」

「いや、新幹線降りるとこまでは一緒だったけど?」

護はまた私に嘘をついているんだと思うと、悔しいのか悲しいのか腹が立つのかよくわからない感情が込み上げてきて、身体中が震えそうになるのを必死でこらえた。

「そういや京都の駅ビルで京友禅のハンカチとか抹茶ケーキとか、やたら女の子が喜びそうなお土産をいっぱい買ってたな。料理の上手な自慢の彼女にでもあげるのかなー?それにしては量が多かったけどなー」

これ以上何も聞きたくないし、護のことはもう考えたくない。

護にはもう二度と期待なんかしない。

気を抜くと涙がこぼれ落ちそうだから、精一杯の気力を振り絞っていつも通りに振る舞う。

「そっか……。じゃあ、伊藤くんも大丈夫そうだし私は電車で帰るね。タクシー乗り場はそこをまっすぐ行ったところだから、気をつけて帰って。また会社でね」

情けない顔を見られたくなくて、軽く手を振り急いで背を向ける。

駅に向かって歩いていると、伊藤くんが大きな声で私を呼び止めた。

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