クールな次期社長と愛されオフィス
12章 夢じゃない夢
12章 夢じゃない夢


湊が去ってから1ヶ月が経とうとしていたある日の夜、レジを締めようとしていた私にマスターから折り入って話があると言われた。

「帰らないといけない時間に引き留めて悪いね」

マスターは申し訳なさそうに頭をかきながらカウンターに腰掛ける。

私は「いいえ、大丈夫です」と言いながらマスターの横に座った。

「アコちゃんは、ずっと抱いていたカフェを持つ夢は今もまだ変わらないのかい?」

「変わらないです」

そう言いながら、海の向こうにいるであろう湊を思い出していた。

「そうか・・・」

マスターはしばらく顎を撫でながら考えている様子だった。

そして、思い切ったように言葉を選びながら言った。

「私ももう年で、この店を切り盛りすることも正直辛くなってきてるんだ。もしよかったら、将来アコちゃんにこの店を引き継いでもらえないだろうか?もちろん、店の名前も内装もコンセプトもアコちゃんの思うように変えてもらって構わない。このまま知らない誰かに店を渡すよりもアコちゃんに好きなように使ってもらう方が私もありがたいんだ」

思いがけないマスターからの言葉に驚き、目を丸くしてマスターの顔を見つめた。

「ほ、本当に?」


あきらめない気持ちがきっとその願いを叶える道筋を照らしてくれる・・・


そんな友江さんの言葉と今の状況がリンクする。

信じられないけれど、こんな夢みたいな話はなかった。

私の大好きなマスターの大好きなお店を私が譲り受けるなんて!



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