クールな次期社長と愛されオフィス
お店を譲ってもらうのは、まだしばらく先の話。

マスターにはもう少しがんばって働いてもらわないとね。

お店を譲り受ける3年後を目標に私のカフェ開店に向けて自分の気持ちを奮い立たせる。

その間に、自分のカフェを持つ為の勉強やオリジナルの紅茶開発やメニューを考えたり、今以上に忙しくなりそうだった。

友江さんに相談すると、経営者の心得的なことが書かれた本をたくさん送ってくれた。

カフェを持つのは夢見心地ではいられないってことを痛感する日々。

湊がいない寂しさを紛らわすには丁度よかった。

そんなある日。朝から秘書室がなにやら騒がしい。

「ちょっと見て、アコ」

マリカ先輩が新聞の一面記事を私に開いて見せた。

その一面には、宇都宮商事の今期決算報告が大幅に改ざんされていたという記事が大きく載っていた。

世界トップを誇る宇都宮財閥にとっては、汚点となるべき記事であることは一目瞭然。

「こんな記事、載っちゃったらしばらく大変ですね」

「そうなのよ。社長の責任がこれから問われることになりそうね。これも社長の座を保持しようとした結果招いたことだと思うわ。なんでもそんなワンマンな社長への日頃の不満がたまった経理部長が新聞社に告発したらしいのよ」

「そうなんですか?」

「そろそろ社長も退陣の時かもしれないわね」

マリカ先輩は小声で、だけど少し嬉しそうな表情で私にささやいた。

「こんな時、湊部長がいてくれたらなぁって、皆言ってるわ」

湊。

湊ならこの状況見たらどう言うだろう?
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