クールな次期社長と愛されオフィス
私は急いでキッチンに向かい、作りたてのブレンドティをティポットに入れた。

湊はキッチンカウンターに肩肘をつけてそんな私の様子を優しい表情で見守る。

湯を沸かし、ポットに湯をそそぐとふんわり香ばしくやわらかい香りが広がった。

「これは?」

湊は私の顔を見る。

「・・・はい」

私は笑顔で湊に頷いた。

ポットからティカップに静かに注ぎ入れる。

「これは、アクの少ない日本製の茶葉を使いました。ドライジンジャーと洋酒漬けの柚子を乾燥させたものを粉末にして混ぜ込んでいます。あと金平糖を少しプラスして甘みを出しました」

湊はカップに顔を寄せその香りを吸うと、ゆっくりと口に含んだ。

そして喉の奥に流す。

「うん、うまい。このジンジャーと柚子のバランスなら海外でも好まれるだろう。しかも金平糖で甘さを出すとは。アコ、よくここまでの配合を編み出したな」

湊は満足そうに言った。

「あと、数種類、ジンジャーを使った紅茶を用意しています。また夕食後にでも飲んで下さい」

「ああ、頂くよ」

「あと、このブレントディ、日本のミネラルウォーターとセットで販売したらどうかと思うんですがどうでしょう?」

湊はカップを口につけたまま私の方に視線を向け、にやっと笑う。

久しぶりの不敵な笑みに一瞬怯む。

「な、なんですか?」

「アコもいつのまにかそんな立派な企画提案までするようになったんだなと思ってね」

「すみません、差し出がましいこと」

「いや、アコがとても頼もしく見えるよ。日本の水とセット販売はいいアイデアだ。是非採用しよう」

「本当ですか!」

体中が熱い。

自分の生み出したものやアイデアが通るってこんなにも心浮き立つものだったんだ。

そんな興奮は今まで味わったことがなかった。



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