クールな次期社長と愛されオフィス
「学生の頃から丸宮珈琲店でアルバイトしていて、そのうち自分のカフェを持ちたいっていう夢が強くなってきたんです。だから、副業禁止だってわかってたんですけどずっと辞められずにいました。本当に申し訳ありません!」

部長は腕を組むと面白そうな顔をして私を見つめていた。

胸がドキドキしすぎて呼吸するのももどかしい。

「で、お前の夢はどんなカフェだ」

「紅茶専門のカフェです。昔から紅茶が好きで、紅茶にはブレンドや煎れ方次第でたくさんのバリエーションがあるってところが面白いなって思って」

ほぼ初対面?の部長にこんな話をしてる状況にふと違和感を覚える。

おかしいよね、絶対。

私の具体的なカフェの話なんて、誰にもしたことないのに。

「ふぅん、紅茶ね」

部長はこめかみに人差し指を付け、何か考えている様子だった。

明るい部屋で正面から宇都宮部長をあらためて見ると、やっぱり皆がため息をつきたくなるほどきれいな顔をしていた。

どこのパーツをとっても無駄がない美しさ。

知性が漂う額と眉。

そして、いつも何かを考えているような切れ長の目。

ただきれいだけじゃない頭脳美っていうんだろうか。

こんな男性、長いことこの会社の秘書をしているけど初めてだった。

そして、部長はようやく口を開いた。

「堂島の夢はわかった。夢を持つのはいいことだと思う。君の夢を遮る権利は俺にも会社にもない」

ってことは?

副業認めてくれたってことだよね?

今まで黙って苦しかった気持ちがふっと軽くなったのを感じた。







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