クールな次期社長と愛されオフィス
どんよりとした気持ちのままお昼休みを迎えた。

「アコ、大丈夫？」

そう言って部長室に現れたのは社長付秘書のマリカ先輩だった。

「マリカ先輩～！」

思わず、マリカ先輩の体に抱きついてしまう。

「今朝は大変だったわね。社長すごく恐かったんじゃない？」

「恐かったですー。もう一人でどうにかなっちゃいそうなくらい心臓がばくばくして」

マリカ先輩は私の頭をよしよしと撫でながら言った。

「社長もさっき出張で出ていったし、よかったら一緒にランチでもどう？気晴らしに外に食べに行かない？」

「お願いします！」

そんな先輩に涙が出そうだった。

傲慢で勝手な社長に振り回されながらも、社長の怒りをコントロールしながらしっかりと秘書としての仕事をこなすマリカ先輩は秘書達の憧れの的。

隣のビルの地下にあるパスタ屋に入る。

私達が会社を出たのがお昼の時間を外していたからか店内は割と空いていた。

パスタを頬ばりながら、今朝あったことをマリカ先輩に話す。

「部長もまたとんでもない日にトラブルに見舞われたのねぇ。部長から連絡はあった？」

「いえ、それがまだ。打合せが長引いてるんだと思います」

「そっかぁ。しょうがないよね。会社で一番期待されている新事業だから失敗は許されないし。それなのに社長は怒り過ぎなのよ。元々、今回の戦略会議だって社長が部長と話したくって無理矢理ねじ込んだ会議だったんだもの」

「そうなんですか？」

それは初耳だった。

「それはもう！部長の今持ってる情報は全部知っておかないと気が済まないって感じだからね、社長は」

マリカ先輩は私に顔を近づけて小声で続けた。

社長は弟である部長が昔からいつも自分よりも一歩先を行くエリートで嫉妬しているらしい。

そして今も社長の座を奪われやしないかと危惧していて、何か隙を見つけてこの会社から追い出そうと画策しているということだった。
< 36 / 120 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop