クールな次期社長と愛されオフィス
「本当ですか?」

宇都宮家の大きさを物語るような話に一瞬耳を疑う。

「本当よ。親しくなった役員からの情報だから間違いないわ。実際社長室でもぼそぼそ部長へのやっかみ聞こえてくるもの。恐いったら」

ランチについていたグレープジュースをストローで吸いながら私はうんうんと頷いた。

本当だったら、恐い話だ。

今日のことも、部長辞めさせるための格好の材料にされそうだ。

それも私がもっとうまくフォローできたらよかったのに。

はぁーと長いため息をついた。

「アコも人ごとじゃないのよ。社長にとっちゃ、部長と秘書は一心同体的な目で見られてる。秘書の失敗も部長の失敗だからね。揚げ足取られないように十分気をつけなさいよ」

マリカ先輩の大きな二重がくいっと私の顔を見上げた。

思わず体が震える。

私なんて隙だらけだ。

しかも会社に内緒で副業までしてるし。

マリカ先輩に「はい」と答えた声が少しうわずった。

部長付の秘書が思っていたよりも大変な仕事なんだってこと今更ながら気付いた。

もともと私には役が重すぎたのかもしれない。

今までのんびりしてきたツケが今頃回ってきた。

「でも、アコなら大丈夫よ。何かあったらいつでも相談乗るし、必要な情報は入れるから!」

暗雲立ちこめた中にいるような私の姿を見て、マリカ先輩は私の肩をポンと軽く叩いた。

社長付の先輩と比べたら私なんてどうってことないよね。

マリカ先輩もいる!

部長のために私もしっかりしなくちゃ。

ほんの少しだけ、自分の気持ちを入れ換えて部長室へ戻って行った。
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