クールな次期社長と愛されオフィス
部屋に戻ると、私の机上に何枚かメモが置かれていた。

そのメモの中に、部長からの電話内容が記されたメモもあった。

お昼休みにかけて来たんだわ。

慌てて部長の携帯に折り返す。

『堂島?さっき打合せが終わった』

「はい・・・」

『こちらのことは何とか無事決着がついて、来週の試作品には問題なさそうだ』

「それはよかったです」

私の気持ちとは裏腹に意気揚々と話す部長にこの後のことをどう言えばいいか悩んでいた。

『社長から色々と嫌なこと言われただろう。今朝は悪かったな』

そんな風に優しく言われたら泣きそうになる。

だって私は全然社長に部長のことフォローできなかったんだもん。

『社長にはさっき俺から電話入れといた。かなり不機嫌だったけどな。事情をしっかり説明したらわかってくれたようだ』

「え?本当ですか?」

思わず甲高い声が出てしまった。

私が言うよりも先に、部長は自分自身をきちんとフォローしたんだ。

秘書としては役立たずだった私。

『なんだ、落ち込んでたのか?柄にもない』

電話の向こうで部長がいたずらっぽく笑う。

「いえ、かなり社長がお怒りだったし、私も秘書でありながらうまくフォローできなかったものですから」

『いいんだ。気にするな。最初に言ったように、俺は俺自身の後始末くらいできる。お前はブレンドティのことだけ考えとけって』

「え、でも」

『くよくよしてる暇があるんなら、新しい紅茶専門店でも検索しとけよ。日本製の紅茶は谷本紅茶だけじゃないからな。生産者によって、味も風合いも全く異なる。気になる生産者がいたらまた俺に言えばいい。連れていってやるから』

どうして、そこまで私に親切にしてくれるんだろう。

私にはまだ理解できなかった。

ブレンドティ開発が私の仕事だなんて。
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