クールな次期社長と愛されオフィス
「あ。ありがとうございます」

思わず驚いて丁寧な言葉づかいになる。

「で、さっきの質問の答え、まだなんですけど」

亮が頬杖をついて、ニヤニヤ笑いながら私の顔を見上げた。

「え?何だったっけ?」

「何時に終わるの?って質問」

「閉店してからだから22時過ぎかな」

「じゃ、終わったら俺がアコを家まで送るよ」

「え?そんな・・・」

しまった!

ぼんやりしてたら、うっかり帰る時間教えてちゃったじゃない!めちゃくちゃ迷惑なんですけどー。

慌てて全力で否定すべく手を顔の前でぶんぶん横に振った。

「何遠慮してんのさ。俺とアコの間柄じゃん」

いえ、遠慮ではないし、そんな間柄でもないし!

「俺さ、先週最新型のフェラーリ買ったばっかなんだ。是非アコを乗せたいんだ」

昔から車好きな亮はいつもいい車を乗り回してたっけ。

単なる車自慢に付き合わされるのも正直ごめんだわ。

私は車だって全く興味ないし。フェラーリだかフォラーリだかそんなことはどうでもいい。

ただ、この会話が部長に聞こえてやしないか気になってちらっとその方へ視線を向けた。

聞こえてるのか聞こえてないのか部長は相変わらず澄ました顔で、店内に置いてある経済新聞を広げて読んでいた。

こんなくだらない男と親しいなんて思われるのは心外なのに。

どうか聞こえていませんように!

「アコちゃん、ナポリタン一つできたよ」

「はい!」

私は急いでナポリタンをお盆にのせて部長の元へ運んだ。

「お待たせしました。ナポリタンです」

部長は新聞から目線だけナポリタンに向ける。

「ああ、ありがとう、置いといて」

「は、はい」

部長の前にそっとナポリタンを置いた。

なんだか、いつもより一層無愛想な感じがする。

私、何かしでかしたってことないよね?

「あの、仕事で何か問題でも?」

つい心配になって尋ねてみた。

「ここでは仕事の話はなしだ」

部長は私の方を見もせずそう言い放つと、ナポリタンを口に頬ばった。

な、何なの?!

その失礼な態度!

こっちは心配して確認してるだけだっていうのに。

「はい、申し訳ございませんでした」

そう言った語尾が思わず強くなってしまった。

私はくるっと部長に背を向けてカウンターに戻る。


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