クールな次期社長と愛されオフィス
天ぷらに箸を伸ばした手を止めて友江さんが私に顔を向ける。

「この間小樽で会った時はあんなに目をキラキラ輝かせて話してくれていたのに、何かあった?」

本当は全て打ち明けて彼女の見解を聞きたい。

だけど、こんな事情、関係のない人に話せるはずもなかった。

言葉を濁しながら、今はあまりカフェに関係すること全てが進んでいないとだけ答えた。

「そう」

友江さんは少しがっかりした様子で肩を落とす。

「アコさんみたいにこれから未来に希望を持って進んでいく人、大好きなの。応援することで自分も刺激になるしね。ただ、」

そう言うと、一口ビールを飲んだ後続けた。

「何か面白いことをしようとしたとき、皆が皆それを応援する立場ではなくて、横やりを入れてくる人間っているものよ。もちろんそれは人だけではなく、うまくいくのを遮る障害っていうことだってある」

私は友江さんの方に顔を向けた。

「神様はね、時々うまくいきかけた人に意地悪するんだって思ってるの。意地悪することで、その人の本気度を試しているのかしらね?」

彼女は肩をすくめて笑った。

「だから、アコさんが本気で自分のカフェを持ちたいって思っていたら、その思いは決してあきらめないこと。必ず貫き通すって自分自身に誓わないとだめ。何か大きなことを始める時はそれくらいの覚悟が必要ってことよ」

私のふらふら揺れ動いていた夢は、そんな彼女の言葉で自分の中にまた居場所を必死に見つけているようだった。

私がぶれちゃ駄目なんだ。

どんなことがあったって、夢は追い求めることができる。

あきらめたら、今まで培ってきた全てが泡のように消えてしまうような気がした。

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