秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
若菜がきょとんとした顔で振りかえる。
「え、柊ちゃん‥‥?」
──‥何してんだ俺。
若菜の腕掴んで引き留めて。
いつもと違う俺に若菜が戸惑うのがわかる。
駄目だ。
幼なじみの壁を壊したら戻れない。
そう思うのに、
掴んだ腕を離せない。
「もう別れろ」
自分の声とは思えない位低い声だった。
若菜がきょとんとした目になる。
「‥‥俺ならこんな風に泣かせたりしない」
本心だった。
俺だったら泣かせない。無理に触れない。
もっと若菜の事を大事に出来る。
否定しようのない独占欲。
気持ちを自覚たのはついさっきのはずなのに。
「えっ、柊ちゃん‥‥?」
若菜が掴んだ腕から俺の顔へ視線を移す。
ぽかんとしたような表情で。
若菜が鈍感だって事は今に始まった事じゃない。
なのにその時何故かそれが無性に苛ついて、
感情のブレーキが外れた。