半身。然るに片羽。

「…オニィ?」

か細い声が聞こえた。

「…オニィは…いる?」

純粋無垢な瞳で、見上げられた。
2ヶ月前に5歳になったばかりだ。
その歳で、オトンやオカンにもう会えない事を理解しようとしている事に、胸が締め付けられた。

「…瑞葉。オニィは瑞葉といるよ。いるから…」

耐えきれなくなって、瑞葉を抱き締めた。

お悔やみを言おうとしていた弔問客が、その姿を見て涙ぐんでいた。
遺族側のオトンのご両親も。

祭壇上の黒いリボンがかかった写真が目に入った。
先月の正月でオトンの家に行った時の写真。

オトンとオカンが笑っている。

笑ってたんだよ…
つい3日前まで…
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