半身。然るに片羽。
「…かぁさん」
義一が呟いて泣いた。
そして、花枝さんを抱き寄せた。
最上広一も、義一の肩に手を置き哀しそうに見つめている。
これで良い。
声は届いたのだから。
これで良いんだ。
静流と頷き合い、腰を上げた。
「失礼しました」
大きな扉を開けて、廊下にでる。
小さな小さな声。
逝く寸前、知った事実で、とどまってしまった、義一の母親。
義一の血を紡いだまだ名もなき者を、必死に守ろうとした。
産まれてくる孫をみたかったであろう、未練。
自分の意見をはっきりと言えなかった義一の、心配。
義一のこの先を思ったばかりに用意した未来、後悔。
花枝さんのお腹には、義一の子供がいたのが、なぜ皆分からなかったのだろう。