理系教授の秘密は甘々のはじまり
「葉山先生、あのこちらは,,,?」

「うちの研究室の院生で、鈴木だ」

「ああ、秘書的な役割をされているんですね」

波実が抱えているパソコンを見て、講演担当の男性は大きく頷いた。

「そんな感じだな?鈴木」

「は、い」

もう何も驚かない。波実は明後日の方向を向いて返事をした。

「それでは、鈴木さんがパソコンを操作されますか?」

「えっ?」

「ああ」

そんなの聞いてない!さすがの波実もその申し出には首を振ろうとした。

すかさず、波実の耳元で葉山が囁く。

「実際は俺が自分で操作する。お前はパソコンの前で座っていればいい」

それなら聴講席に座らせてくれればいいのに!波実が不服な顔をすると、葉山がニヤリと笑った。

「仲がよろしいんですね」

講演担当者が言うと葉山が満足そうに頷いた。

「まあな」

どうしてこの人は、さっきから周りを誤解させるようなことばかり言うんだろう。

波実は、パソコン係の人に連れられてステージ前のテーブルに着くと、ため息をついて講演時間が始まるのを待った。
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