七色ペンダント
その一文を読んだ後、突然頬を一筋の涙が伝った。
「あれ……」
なんで、泣いてるんだろう。
そっと頬に手を置くと、涙は止まることなく流れ続けた。
「お嬢ちゃん、泣いておるのか。大丈夫かい」
振り返ったそこにいたのは、腰の低い老爺だった。
「ごめんなさい……大丈夫です」
私の姿を見ると、薄く閉ざされた老爺の目が開かれた。
「お前さん………」
「え?」
「……いいんじゃ。なんでもないわい。おや、新選組顛末記ではないか」
「はい。適当に取ったのが、これで」
「わしもよく読んだものじゃ。特に、最後のページがお気に入りでな」
そう言って老爺はニコッと笑った。
「私も、ここ、凄く素敵だと思います」
「そうじゃろ」
そしてまた笑った老爺を見て、私は不思議な気持ちになった。
今日どうしたんだろ、私。
京都と言ったら日本の美だもんな。それで感情が揺さぶられるのかな。
老爺にまた来る約束をした私は、図書館を後にした。