+小悪魔恋愛2+

少し頭を傾ければ、柱の陰からはカウンターの向こうで忙しそうに動き回る柚が見える。

薄いブラウンの制服に黒いリボンタイが可愛くて。

多分この制服が目当てで来る客も少なくはないのだろうと、初めて来たオレでさえもそう感じた。



それにしても……

オレが一発でやられた柚の笑顔は、ここに来る客全員に分け与えられるわけで。



絶対好きになっちゃう奴とかいるんだろうな。

オレが客なら完璧に落ちるもん。

そしたら純平みたいに、オレもここの常連になったりして。

毎日通って、毎日柚のこと眺めて。



でもそれってストーカーみたい。あ、今のオレも十分ストーカーか(汗)



「陸!コーヒーこぼすぞ」

「あ、あぁ、ごめん」



さっきの紗香ちゃんがアメリカンを運んで来てくれた。

カップをオレの前に置き、なぜかその後もオレのことを見てる。



「え、何?」

「もしかして柚ちゃんの彼氏?」

「ぶふっっ…熱っ!」

「ご、ごめんなさいっ!」



紗香ちゃんはオレが僅かにこぼしたコーヒーをサッと拭き取った。



「なんか陸くん、さっきからずっと柚ちゃんのこと目で追ってる気がしたから。ごめんね〜」

「え!!そ、そんなことは……」



全身に汗が流れる感覚。

心臓なんて、それは驚くほどにバクバク高鳴って。

目の前では純平が腹を抱えて笑っている。



「第三者にまで気付かれるほどの素直バカ」



でかい声で笑うと柚にも聞こえるだろ!



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