35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~
前のマンションより少し広めのテラスには月を愛でる私のために貴くんがテラス用のカウチソファーを置いてくれている。

大きめなカウチに足を投げ出して座りぼんやりとしながら音楽に集中していると、不意に虚しさがこみ上げてきた。
何だろう、私一人でここで何をしているんだろう。

私に似合わない豪華なマンションに豪華な家具。

同居しているはずなのに近頃はほとんど顔を合わさない芸能人の恋人。
”月の姫”だなんて呼ばれている私だけど、芸能界なんて私の知らない世界に住む私の恋人こそが月の世界に住む人じゃないんだろうか。

それに私がメールをしなかっただけで大勢の人が私を探して大騒ぎになって迷惑が掛かって。
進藤貴斗の彼女だなんて言われて騒がれて、一緒に暮らしていても、毎晩その恋人がどこで誰と何をしているのか私は知らない。
彼に「飽きた」そう言われたら私はどうするんだろう。

何だか疲れたな。
私なんてこのまま月に吸い込まれてしまえばいいのに。

ミュージックプレイヤーのボリュームを上げて目を閉じた。
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