未来を見るなら、君と一緒に
「まずは帰ろうか」



陽くんがあたしに手を差し伸べる。



「うん」



あたしもそんな彼の手に自分の手を重ねる。




「手なんて、前にも何回も繋いでるのに今日は全然違う気がする」



陽くんが握った手に力を込める。



「うん。なんか違うよね」



あたしたちは毎日一緒にいたし、家にも泊まったりしていたし何の変化がないように感じる。

でも、その関係に名前がついただけで全然違うように感じる。

こんなふうに、名前のない関係が長く続いたあとに誰かと付き合うなんてこと初めてでなんだかくすぐったい。



「俺、大学の頃は潤の隣にいるだけでドキドキしてた」


「え?そうだったの?」


「うん。出さないように隠してたけど、いちいち緊張してたし」


「陽くん……」



あたしの知らないところでずっとあたしを想ってくれていた陽くん。



「俺、潤のこと好きになってから、本当にほかの人なんて。見えなくてさ」


「うん」


「だから、いまこうして想いが通じあったことがすげぇ奇跡に感じる」


たしかに、陽くんとあたしは奇跡なのかもしれない。

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