君を愛で満たしたい~御曹司のとろ甘な溺愛~
そんなある日。事件は起こった。


「葉月、ゼネラル製薬商品開発部の伊佐治さんから電話」


電話を取り次いでくれた静香は、なぜか深刻そうな顔をしている。


「はい」


電話に手を伸ばすと「怒ってるみたいなんだけど」と付け足され、緊張が走る。

怒らせるようなことをしただろうか。
心当たりがない。

最初はそっぽを向かれていた伊佐治さんとも、ジェネリック医薬品のことで徐々に距離が近づいてきて、原薬の調達も任せられるようになっている。

とにかく話を聞かなければ始まらないと電話を取った。


「お待たせしました、北里です。いつもお世話に——」
『どういうことだ。おたくと契約した原薬が全然足りない。入ってこないんだ。このままでは需要に追いつかない。近いうちに欠品するぞ』
「えっ……」


私は言葉を失くした。

一カ月前から新薬の原料の輸入を任せてもらい、順調に推移していたのに。
< 128 / 315 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop