君を愛で満たしたい~御曹司のとろ甘な溺愛~
「あっ、コーヒー淹れてますので、もう少し待ってくださいね」
「相変わらずだな。後輩にやらせればいいのに」


たしかに、彼が赴任する前とは違い、後輩もたくさんできた。
だからこうした雑用は後輩に頼んでもいいし、他の先輩たちはそうしている。


「でも、嫌いじゃないですし、疲れているのは皆同じです」
「それじゃあ、手伝うか」
「えっ? 一ノ瀬さんはいいですよ。部長さんなんですよ?」


彼がカップを出し始めたので慌ててしまう。


「『疲れているのは皆同じ』なんだろ?」
「そうですけど……。一ノ瀬さんは別ですって」


さすがに部のトップにコーヒーを淹れさせるなんてできない。


「どうして? 俺はいつでも北里の隣にいたいけどな」


そう言われ、心臓がドクッと跳ねる。
二年前、囁かれた言葉と同じだったからだ。

けれども、彼は素知らぬ顔で作業を続けている。

そんなことを覚えているのは私だけか。
なにもなかったんだし。
< 33 / 315 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop