君を愛で満たしたい~御曹司のとろ甘な溺愛~
「バカだな。そんな顔をされると行きたくなくなるだろ」


どうして、抱きしめられているの?
頭が真っ白になり思考が固まる。しかし、彼の胸は温かかった。


「ヤバイ。本気でセクハラだ。黙っておいてくれ」


彼はそんなことを言いながらも私を離そうとしない。


「言いませんよ」


だってイヤじゃないもの。


「どうやら寂しいのは俺のほうらしい。本当は北里の隣にいたいんだ。自分で決めたのに情けない」


彼は私の耳元でつぶやく。

私の、隣に?

最大の褒め言葉をもらったのかもしれない。
彼についていくので精いっぱいだった私をそう言ってくれるなんて。


「早く戻ってきてください。私、ちゃんと成長しておきますから」
「あぁ。インドからも北里に仕事を振るつもりだ。軌道に乗ったら帰ってくる。それまで頼んだぞ」


彼は時期を明言しなかった。というか、できないのだろう。
軌道に乗るのが一年なのか、はたまた五年なのか。誰にもわからないのだ。


「それじゃ」


名残惜しそうに表情を曇らせる一ノ瀬さんは、今度こそ帰っていった。
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