君を愛で満たしたい~御曹司のとろ甘な溺愛~
「おまけに兄と言われて、かなり傷ついた」
「ごめんなさい。私……」
「わかってる。お前は元婚約者のことがちゃんと好きだったんだよな。落ち込みもしたけど、そういう真面目なところも不器用なところも好きなんだしとも思った」


彼は私の髪に手を入れ、優しく梳きだした。


「本当は、その婚約者から奪ってしまいたいくらいだった。けど、北里の幸せを壊すなんてバカな真似はできないと思いなおして、インド行きを早めたんだ。近くにいると気持ちを口にしてしまいそうだったし」


そうだったんだ。
たしかにインド行きは突然だったけど、まったく気づかなかった。


「あっちの仕事は想像以上に難航して困難ばかりだったけど、時々聞けるお前の声に励まされていた。きっぱり忘れるつもりだったのに忘れられなくて。たとえ手の届かない人になっていたとしても会いたいという気持ちが止められなくなった」


彼はそこで「ふー」と大きく息を吐き出す。
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