愛してるのに愛せない。
しばらくすると、海斗さんがやってきた。
みんな、海斗さんに向かって挨拶している。
良助くんも、その場で立ち上がり、挨拶をしている。

「くーちゃん?」

海斗さんは、私の前に来ると、驚いたような顔をしながらそう聞いてくる。

「こんばんは、海斗さん。」

笑顔で返すと、海斗さんは、まいったな・・・。と照れたように笑う。

「綺麗になったね。くーちゃん。綺麗だよ。」

そう笑顔で言ってくれる海斗さんに、私は恥ずかしくなった。
続いて陸さんも、倉庫に入ってくる。
陸さんは、いつも倉庫に来ると真っ先に私のところに来てくれる。

「くー!!!・・・・くー?」

私のところまでいつものように、笑顔で走ってきたけれど、私の目の前でピタッと止まると、小首を傾げる。

「こんばんは、陸さん。」

陸さんにも笑顔で挨拶をすると、私の手を取り、ピョンピョンと飛び跳ねる。

「くー、綺麗だね!!!すごい!!!」

まるで、自分のことのように、嬉しそうに言ってくれる。
ありがとう。と、照れながら言うと、陸さんも、照れたように笑って、海斗さんと一緒に上へと上がって行った。
それを見送ると、倉庫内が急にピリッとした緊張が走る。
咲が来たという証拠だ。

咲は、なんて言ってくれるんだろうか。
少し、ドキドキしながら、咲が来るのを待つ。
隣に立つ良助くんに聞こえてしまいそうだ。

「・・・・。」

しかし、咲は、一瞬こっちを見ただけで、何も言わずに上へと行ってしまった。

「だよねー・・・。」

小さく洩れた声は、良助くんに聞こえていたようで、

「ま、竜王は、何か言うようなタイプじゃないしな。」

そう言って、座った。
そうだ。
私がおしゃれをしたところで、咲には関係がない。
咲が私を隣に置く理由は、小百合に似ている。それだけの理由なのだから。

「・・・・。」

また、ざわざわとし始めた倉庫内を見つめていると、何も言わずに良助くんが頭を、ぽんぽんっとしてきた。

「何よ。」

「悲しそうにしてたから。」

そう言う良助くんの手は大きくて、どこか安心できた。
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