短編集
「お前もだろ。」

そう言うと、「まーな。」とケラケラ笑うあいつは、途中でコーヒーを買うと、喫煙室へと入っていく。

「そういや、さっき何て言おうとしたんだ?」

カチッとタバコに火をつけるあいつは、やはりタバコを吸うときは左手・・・。

「それ。」

「なに?」

「お前右利だろ?なんでタバコ吸うときだけ、左手なんだよ。」

そう言うと、自分の手を見て、小さく笑う。

「癖・・・かな。」

「癖?」

「知りたい?」

意地悪く笑うあいつに、正直イラついたが、気になっていたことなので我慢して頷く。

「・・昔付き合ってた彼女がさ、右手を繋いでいてほしいって言ったんだよ。
タバコを吸うときも、近くにいて外なら、いつでも離れないように繋いでいてほしいって・・・。だから、左手で吸うようになったんだ。」

そう話すあいつはどこか遠くを見ながら微笑む。
< 2 / 3 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop