天才策士は一途な愛に跪く。
青い空と、絵具でも出せないエメラルドグリーンの綺麗な海の上を加速しながら
走り出した。
水飛沫が上がって
時にバウンドしながら波を駆ける。
そのアップダウンにドキドキしながら目を見開いていた。
瑠維の指示通り
しっかりとインストラクターの腰にしがみ付きながら、私は風を全身に感じた。
「気持ちいい!!!こんなに、気持ちいいなんて思ってなかったよ。」
後ろから追いついてきたグラサン姿の瑠維に私は大きな声で呼びかけた。
口角を上げて嬉しそうに
「良かったな!!」と瑠維は答えた。
論文の事や転職の事・・。
それに、昨日から連続して起こる気の滅入る出来事たち
今は何も考えずに心が開放されていた。
眩しい太陽と、美しい海と風を感じて目を閉じる。
こんなに気持ちい景色があるんだ!!
30分ぐらい走って身体も完全にスピードに慣れた頃・・。
少しボートから離れた場所で海を走っていた。
見渡す限り海の景色が続く。
「何だ・・あのボート・・。」
瑠維の声に驚いて目を開けると、一隻の青いボートが200Mくらい
先に見えた。
「瑠維、どうしたの??」
「いや・・。急に表れてウロウロと同じ所を旋回してるだろ。
ここ、浅瀬だし・・。ジェットスキーを楽しんでる場所でウロウロするなんて
可笑しいだろ!!危ないなぁ。」
「ちょっと声かけて、話してきますよ。南條さんはここで待機しててください。」
「解りました・・。さっきから気味が悪い動きをしてるんで・・。
気をつけてくださいね!!」
「晶もな・・。水上バイクの事故って何かと多いんだ。
ボートと衝突とか、ないわけじゃない。
何かあったら海に飛び込めよ??
ライフジャケット着けてるから浮いて助かるぞ。」
心配そうに晶を見ながら説明すると、彼女は微笑みながら大声で叫んだ。
「解った!!じゃあちょっと行って話してくるね。」
ハンドルを切り返してユーターンした晶の背中が離れていく。
「なんだかなぁ・・。早く撤収してくれるといいけど。」
サングラスを外して、遠くで停泊を続ける青い船を確認した。
「・・・あれ?」
さっきまで停まっていた場所にあの船は見当たらなかった。
瑠維はゾクリとする寒気が走って、振り返った。