天才策士は一途な愛に跪く。

さっきまでの心地よかった海上はもはや私たちにとって安全な場所では
なくなっていた。

斜め前へと青い船は急激にスピードを上げて全力で突進してきた。

視界にあっという間の速さで現れた青いボートを確認した瞬間、
声にならない驚きに目を見開いた。

「・・・!!!?」

嘘!?危ないっ・・。

そう思った瞬間の出来事だった。

「うっ、うっ・・うわぁぁああぁ!!!」

いきなり目の前に現れた青いボートに、パニックになった操縦者は回避しようと
向きを変える。

ブレーキが備わってない水上バイクにとって急に止まることは出来ない。

致命的な、視覚への侵入にインストラクターは慌てて横へと方向を変えたが
間に合うはずもなかった。



ザバーーーン・・・!!!!

大きな水飛沫の音と共に、巨大な遠心力で遠くへと吹き飛ばされる。

「あきらーーーーーーー!!!!」

ふわりとした信じられない浮遊感と、遠くで聞こえる悲鳴と
共に身体が海に投げ出されるように吹き飛んだ。

水上バイクは倒れて、私は海へと放り出された。


ゴボゴボゴボ・・・。

頭の中でさっき瑠維が言った言葉が反芻する。

海に叩きつけられたせいで、全身に痛みが走った。
昨日の怪我もあって、自由に手足を動かすことが出来ない。

「何かあったら海に飛び込めよ??
ライフジャケット着けてるから浮いて助かるぞ。」


足をばたつかせながら着ていたライフジャケットを確認した。


 <そんな、・・・まさか!!?>

すぐにある事に気づいた私は思考が混濁した。


何で??

こんな事って・・。


「「ゴボッ・・!!」」

驚いた私は、慌てて水を飲んでしまった

苦しい・・!!

息がどんどん・・苦しくなっていく・・・。

綺麗なエメラルド色の水の中で、次第に視界が狭くなり
遠くで私を呼ぶ声さえも・・・・遠くなって・・いく。


「晶っ!!これに掴まるんだ・・・!!」

バシャッ・・。

私の手の先に届くか届かないかの距離に、浮き輪が投げられた。

最後に聞こえた声に私は最後の力を振り絞って
海上に再浮上すると投げられた浮き輪に身体を預けた。

浮き輪に掴まり、顔が水面から離され呼吸が楽になった・・・。

「ゲホっ・・。ゴホッゴホ・・・。」

むせ込みながら浮き輪に必死の思いでしがみ付いた。


・・・バシャン!!!

それを確認した人物はボートの上から海へと飛び込んだ。



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