天才策士は一途な愛に跪く。
「晶・・。晶、大丈夫じゃないよな・・。
ごめん・・。こんな事実を、こんな形で君に伝えることになって。」

私は隣の聖人を見ると、笑顔を作った。

「聞けて良かったよ。
ずっとあった違和感の正体が解ったから・・。」

顔立ちの違う私、機嫌の悪い母・・。

義理の父と、母が熱心に可愛がる妹。

その中で、必死で家族であろうとしていた自分・・・。

「なるほどなって・・・。思った。
私は、本当のお母さんや、お父さんにちゃんと愛されていたのかな・・。」

聖人は私の手を優しく握った。

「晶は、ちゃんと両親に愛されていたと思うよ。
そうじゃなきゃ、こんなに・・。人に優しく出来ないよ。」

思い出そうとしても、やはり靄がかかったみたいに
過去は想起されなかった。

奇しくも、わたしの研究分野は脳の記憶システム領域のデバイスを
研究しているのに・・。

だけど、その道を選んだのも・・・。

何処かで、意味があったのかもしれない。

聖人の言葉と、手の温もりが嬉しかった。

「うちも偽りだらけの家族だった・・。
美桜は言い争う両親に胸を痛めていた。
僕はいつの間にか、家族に期待しなくなった。」


「終いには・・。父は実の父じゃなくてね。
DNA鑑定の結果には呆れて笑ったよ。だけど、僕には美桜や慧・・。
それに君がいた・・。」

私は、その言葉に驚いて顔を上げた。

聖人は優しい琥珀色の瞳で私の瞳を見つめた。

ゆっくりと手が頬に伸ばされる。

「いつも言い聞かせてた・・。自分が戦うのは過去の自分であって
誰かと戦うんじゃない。
もう二度と・・。後悔しないように、守れる力が欲しかった・・。
今の君には、僕がいるよ・・。
だから、君の生い立ちや家族はどうでも・・。
今の君には沢山の友達や、仲間がいるだろ。」

「・・・山科くん・・。」

「それを教えてくれたのも君だよ。
特別扱いしない君が好きだった・・。
どんな僕の捻くれた言葉でもサラっといつも救いをくれるんだ。」

どれだけ、救われたか解らない・・。

君がくれる言葉が、
どれだけ僕の目を覚ましてくれたんだろう。

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