天才策士は一途な愛に跪く。
「父の代の山科メディカルでは、きな臭い事件や事故が起こっていたのは確かです。
火災があってから僕は、彼女と一緒に暮らしています。
僕は晶の事を大切に思っています・・。
だから、彼女を僕の手で・・。命に代えても守りたいんです。
お母さんには、そのことを伝えておきたかったので・・。」

聖人の言葉が嬉しかった・・。

こんな状況で、この空間で頼れる人が居てくれて・・。
救われるような思いだった。

「美桜ちゃんのお兄さん・・。聖人くんだったわね・・。
数年前に、貴方が父親の不正を告白する謝罪文を発表したとき・・。
私は驚いたわ。」

「貴方は、過去の犯罪や、山科の中で起きた事件、事故に関わった人たち全てに
心から謝罪をすると言っていた・・。
少しだけ、アルバンや姉さんが救われた気がしたの・・。」

森丘可憐は、涙をハンカチで拭いながら、落ち着いた表情で聖人を見上げた。

「・・・お母さん。」

「今度は・・。守らせて下さい。
僕は、二度と自分の所の研究者を見殺しにする訳にはいかないんです。」

瞳に決意を込めた聖人の言葉に頷いた母は、私を見た。

「今まで、本当の事を言えなくてごめんなさい・・。
貴方は今でも、私の子供の一人だと思っているわ。不器用に傷つけてしまって
ごめんね・・。
貴方もそう望んでいるのなら、聖人さんに守って貰って・・・。
無理に連れて帰ろうと思っていたけど・・。
私には、もう今は・・、それも出来ないわね・・。」

「お母さん・・・。」

育ててくれた母に、何も言えなかった・・。
きっと、再婚するまで一人で大変な思いで育ててくれたに違いないのに。

今の私は、言葉が出て来なかった・・。

「晶が、無事で居てくれるならそれでいいわ・・。
・・・貴方を、深く傷つけてごめんなさい。」

「聖人さん、晶のことをどうぞ宜しくお願いします。」

母は、深々と聖人に頭を下げた。

母は、一足先にホテルへ帰ると言って退出した。

私はそんな母にどう声をかけていいか解らずに、ただ黙って頭を下げて見送った。

聖人の秘書が、母をホテルまで送り届けるからと一緒に部屋を退出して車を
手配しに出ていったようだった。

私は、椅子に座ったまま目の前に置かれた入れたての温かい紅茶をボーッと眺めていた。
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