うぶ婚~一途な副社長からの溺愛がとまりません~
帰り見送った時も、にこやかに手を挙げて『また明日』って言っていたのに……。

動揺して声が出ない。

『日葵……父さん、昨日まで元気だったよな?』

「あっ……はい」

『そうだよな。……それなのにどうして……』

今にも泣きそうな彼の声に、自分を奮い立たせる。

動揺している場合じゃない。私は社長の秘書で、なにより廉二郎さんの恋人でしょ? こういう時こそ支えないと。

ふたりして動揺していたら、判断力も鈍ってしまう。

「廉二郎さん、社長が運ばれた病院を教えてください。私もすぐに向かいますから」

『……悪い』

こんなに弱々しい声を初めて聞いた。

でも誰だってこうなるよ。私だってお父さんが倒れて緊急搬送されたら、もっと取り乱していたと思うから。

社長、大丈夫ですよね? 廉二郎さんが幸せになって、孫を抱くまでは死ねないって言っていましたよね? お願い、どうか無事でいて。

廉二郎さんから搬送された病院を聞き、出勤してきた上司に事情を説明して急いで会社を後にした。
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