うぶ婚~一途な副社長からの溺愛がとまりません~
けれどここで感情的になって言ってはなにも伝わらない。一度自分を落ち着かせるように珈琲を飲み干した後、真っ直ぐ彼を見据えた。

「失礼を承知で言わせてください」

前置きをし結婚に対する自分の想いを吐露していく。

「副社長は結婚をなんだと思っておられるのですか? ビジネスではないのですよ? お互い好きになって、一生添い遂げたいと思える相手だからこそ皆さん結婚なさるんです」

話を聞いていると、副社長は結婚を仕事の範囲内だと思っていない? 私にはそう感じてしまった。

すると副社長はすかさず聞いてきた。

「つまりキミには、そう思える相手が既にいるということか?」

残念ながらそう思える相手どころか、誰かを好きになったことさえないだなんて、偉そうなことを言ってしまった手前言えない。

ここで弱腰にはなれず、つい見栄を張ってしまった。

「いいえ、相手はいませんが、そう思えるほど誰かを好きになった経験はございます」

「……そうか」

見栄を張ると、副社長は呟き押し黙る。
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