うぶ婚~一途な副社長からの溺愛がとまりません~
これは副社長が私の言いたいことを理解してくれたと判断してもいいよね?

だったらこれ以上、副社長と一緒にいる義務はない。それにここは会社の近く。よく社員が立ち寄るところだもの、誰かに見られる可能性が高い。

それで変な噂が流れたらたまったものじゃない。

「ですのでどうか副社長も、結婚は好きな相手となさってください」

深々と頭を下げ、席を立つ。

「珈琲ごちそうさまでした。業務に戻らせていただきます」

再び丁寧に一礼し、唖然とする副社長を残して珈琲ショップを後にした。

お店を出て歩道を歩きながら頭をよぎるのは、副社長の結婚に対するおかしな価値観。

常に冷静沈着でいなくてはいけない職種だとわかっていても、怒りを抑えることができなかった。

恋愛経験のない私でも、やはり結婚には憧れがあるから。

でも副社長は頭の回転が早いお方だ。手腕は社長以上だと噂で聞いたこともある。

そんな彼なら私が言ったことを理解し、社長にも止めるよう言ってくれるはず。


その願い通り、次の日から社長に副社長への妙な頼まれごとをされたり、彼の話をされることはピタリとなくなった。

副社長とも会うことなく、今まで通りの日常が過ぎていく。そんな毎日安堵し、仕事に打ち込む日々に戻っていった。
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