うぶ婚~一途な副社長からの溺愛がとまりません~
値札を見ると現実に引き戻された。一式買い揃えたら恐ろしい金額になる。

試着した姿を見せて丁寧にお断りしよう。

試着室のドアを開けて外に出ると、私の姿を見た社長は目を細めた。

「うん、似合っているじゃないか。可愛いよ」

「大変お似合いです!」

社長と店員ふたりに褒められ照れ臭くなる。

「ありがとうございます」

素直にお礼を言った次の瞬間、社長は笑顔で言った。

「見立て通りだね。……うん、これなら問題ない。彼女が着ているもの一式を包んでくれ」

「かしこまりました」

ふたりのとんでもない会話の内容に焦り割って入る。

「しゃ、社長……! お気持ちだけ頂戴いたします」

これ一式をだなんて……! けれど社長は「うーん……」と唸った後、にっこりと笑った。

「でも井上くんが試着中に支払いを済ませているんだ。だから遠慮せずもらってくれ。いつも仕事を頑張っているご褒美だと思って」

「しかし……」

もらってくれと言われ、素直に「はい」と頷けるはずがない。
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