[完] 空に希望を乗せて [長編]

練習開始

今日は愛莉ちゃんと先輩のごたごたがあったものの、ちゃんと練習がはじまった。 里羽先輩、里奈先輩、遠藤奏先輩に、素振りの仕方を教わる。私、美結、愛桜の3人は遠藤先輩が担当になる。遠藤先輩、ちょっと怖い。
「えっとね、まずは持ち方やね。足にこう挟んでー握手する手でこう握って。」
私、美結、愛桜は遠藤先輩を凝視して真似をする。ふと愛莉ちゃんを見る。里羽先輩に柚香ちゃん、友梨香ちゃんと共に教わっているがぶすっとしている。ちょっとむくれてる。可愛い…。なんかバドミントン部可愛い人おおくない?
「おーい、茉夏ちゃん?」
先輩の声が耳に入る。あ、やだ。また遠くに行ってた。
「あっ、ごめんなさい…」
また声が小さくなる。あぁもうついつい考えるせいで遠くに行ってしまう。
「ううん、それでね、ラケットはこの角度でね、そうそう、こんな感じね。」
先輩が私の手を取りつつ説明する。ほんのり甘いにおい。ドキドキする。
「それで、これがクリアってやつよ。あのー、部活動紹介の時やったやつ」
あぁ、と感嘆の声が出る。ふふっと声があがる。恥ずかしい。先輩の結った髪が揺れる。陽が後ろからあたって、女神のように輝いている。先輩、綺麗。
「つぎははね上げ、又はロビングって言うの教えるね。」
「はい。」
3人そろって返事をする。愛桜のひときわ高い声が耳に響いた。
「みんな真似してみて?」
じっと先輩を見つめて真似をしてみようと試みる。どうするんだろ、ん?どうなってるの?え、分かんない。
「お!美結ちゃん上手ーい!」
遠藤先輩の言葉。普通に自然にできている。いいな、羨ましい。
「せんぱーい、わかんないです!」
愛桜、素直だ…。私も素直にならなきゃ。でも恥ずかしい。
「私も分かりません…」
「うんうん、わかった!愛桜ちゃん、握り方確認してみ?」
「はい、えっとー……、あ!ホントだ違ーう!」
「んで、茉夏ちゃんはすくうような感じでやってみて、まずはフォアでいいから。」
こう、かな?ラケットでなにかをすくうように振ってみる。
「おっけおっけ!茉夏ちゃん、そんな感じ!」
やった!出来た!嬉しい…。
「じゃあ次はバック練習してみよ」
私はこくんと頷いた。
「ほんじゃ真似してみてね。」
再び私は遠藤先輩をみつめる。今度はわかった。こんな感じかな。
「お!茉夏ちゃん出来とるよ!」
やった。嬉しい。私は顔をほころばせる。
「うん、美結ちゃんもそんな感じ。」
美結、自然だし上手い…。フォーム綺麗。
「愛桜ちゃんはこうかな。」
先輩が愛桜の手をとりながら振り方を教えている。私ももっと美結みたいに綺麗なフォームで素振りが出来るようになりたい。
これから頑張っていこう。そう夕日に心の中で誓った。
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