君のいた時を愛して~ I Love You ~
 アパートまで戻ってきた俺は、サチを心配させないように、いかにも仕事をしてきたという顔をして部屋に戻った。
 朝から顔色の悪かったサチは、ベッドに横になって眠っていた。
 その白い顔は、静かな寝息を立てていなかったら、既にその体から命が抜け出てしまったのではないかと、不安になるほど白く、人形のようで俺は心臓を掴まれるような苦しさを感じた。
 埃を立てないようにスーツを脱ぐと、俺は普段着に着替え、そっと冷蔵庫の中の食材をチェックした。
 思った通り、最近買い物に行かれていないので、冷蔵庫は今までになく空っぽと言うのが相応しいくらい何も入っていなかった。
 部屋の隅に置かれた十キロ入りのコメの袋を確認すると、俺は財布をもって食材を買いに出かけた。
 肉とジャガイモ、ニンジンを買えばカレーが作れるし、あれだけ冷蔵庫が開いているなら、少したくさん作って、明日も食べられるようにすれば、サチに夕飯の支度の心配をさせなくて済む。
 そんなことを考えながら、俺は古巣のスーパーの買い物かごに野菜と肉、ハーフサイズの牛乳、それにカレーのルーを入れるとすぐにレジに向かった。
 バイトの入れ替わりの激しいスーパーのレジに俺の顔を知っているスタッフはおらず、俺は居心地の悪い思いをせずに買い物を済ますことができた。
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